監督紹介


ヤン・シュヴァンクマイエル 

Jan Švankmajer


1934年、チェコスロヴァキアのプラハ生まれ。

プラハの芸術アカデミー演劇学部(DAMU)人形劇科で演出と舞台美術を学ぶ。

ラテルナ・マギカなどの舞台芸術に関わり、1964年から映像作品をつくる。

共産党政権下でプラハの春以降ブラックリストに載り、『オトラントの城』の準備を1973年に始めるが、当局から映画製作の禁止を命じられ、『オトラントの城』完成の79年まで自身の作品は撮れず、70年代の映像活動停止時期には「触覚芸術」、コラージュ、ドローイングなどの美術作品に集中する。60年代の初期の短篇や80年代の自由化の流れの中、91年のビロード革命以降も、社会主義・全体主義・商業中心主義など全ての現実に無意識の領域からの抵抗を続け、その映像表現は一度見たら忘れられない強烈な体験として、カンヌ、ベルリン、アヌシー、チェコ国内など世界中の映画祭で絶賛されている。

 

1990年川崎市市民ミュージアムの「シュヴァンクマイエル映画祭'90」で初来日。

その後も妻のエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーとの共同の美術展や、『オテサーネク』以降の長篇作品が公開されるごとに来日し、江戸川乱歩の『人間椅子』や、小泉八雲の『怪談』のコラージュ本の作成、浮世絵の伝統的な版画技法を使った作品を発表するなど日本文化への造詣も深い。妻のエヴァとは彼女が2005年に亡くなるまで映像・美術など様々な共同作業を行っていた。

現在、チャペック原作の『虫』の撮影準備中。



フィルモグラフィー&受賞歴

1964年『シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック』
*ベルガモ映画祭、マンハイム映画祭、トゥール映画祭、ブエノスアイレス映画祭受賞。
1965年『J.S.バッハ-G線上の幻想』
*カンヌ映画祭短篇映画賞受賞。
1965年『石のゲーム』
*オーストリア映画祭受賞。
1966年『棺の家』
*マンハイム映画祭アニメーション部門及びジョゼフ・フォン・スタンバーグ賞受賞。
1966年『エトセトラ』
*カルロヴィ・ヴァリ映画祭、オーバーハウゼン映画祭、チェコスロヴァキア映画テレビ同盟、クロムニェジーシュ映画祭受賞。
1967年『自然の歴史(組曲)』
*クロムニェジーシュ映画祭、オーバーハウゼン映画祭マックス・エルンスト賞受賞。
1968年『庭園』
*ヴェネツィア短篇映画祭受賞。
1968年『部屋』
*クロムニェジーシュ映画祭、チェコスロヴァキア映画テレビ同盟、ブリュッセル映画祭、オーバーハウゼン映画祭、カルロヴィ・ヴァリ映画祭など受賞。
1969年『ヴァイスマンとのピクニック』
(プラハの春以降の弾圧で、妻・エヴァの勧めでオーストリアにしばらく滞在し、その時に製作した)
1969年『家での静かな一週間』
*オーバーハウゼン映画祭、タンペレ映画祭受賞。
1970年『ドン・ファン』
*クロムニェジーシュ映画祭、チェコスロヴァキア文化省賞受賞。
1970年『コストニツェ』
1971年『ジャバウォッキー』
*オーバーハウゼン映画祭、アトランタ映画祭受賞。
1972年『レオナルドの日記』
1973-79年『オトラントの城』
(共産党の検閲下でブラックリストに載り、70年代は映像製作が中断。リプスキー監督作品の美術や、触覚芸術などを始める。
また、ラテルナ・マギカの『魔法のサーカス』初演は1977年
1980年『アッシャー家の崩壊』
*クラクフ映画祭、国際シネクラブ同盟賞、ポルト・ファンタジー映画祭受賞。
1982年『対話の可能性』
*ベルリン映画祭短篇映画部門金熊賞及び審査員賞受賞。アヌシー映画祭、メルボルン映画祭、シドニー映画祭など受賞。

 90年アヌシー映画祭「過去に上映された最高の映画」に選出。
1982年『地下室の怪』
*オーバーハウゼン映画祭受賞。
1983年『陥し穴と振り子』
1988年『アリス』(長篇第1作)
*ベルリン映画祭でプレミア上映、アヌシー映画祭最優秀長篇アニメーション映画賞受賞
1988年『男のゲーム』
1988年『アナザー・カインド・オヴ・ラヴ』
1989年『肉片の恋』
1989年『闇・光・闇』
*ベルリン映画祭、クラクフ映画祭、ザグレブ映画祭、エスピノ映画祭、オーデンセ映画祭、ヴヴェール映画祭受賞。
1989年『フローラ』
(1989年ベルリンの壁崩壊。1990年チェコスロヴァキアの民主化運動「ビロード革命」)
1990年『スターリン主義の死』
(1990年、川崎市市民ミュージアムの「シュヴァンクマイエル映画祭'90」で初来日)
1992年『フード』
1994年『ファウスト』(長篇第2作)
*チェコ・ライオン賞、カルロヴィ・ヴァリ映画祭受賞
1996年『悦楽共犯者』(長篇第3作)
*ロカルノ映画祭受賞
2000年『オテサーネク』(長篇第4作)
*ピルゼン映画祭グランプリ、ベルリン国際映画祭アンジェイ・ワイダ賞、チェコ・ライオン賞受賞
2005年『ルナシー』(長篇第5作)
(2005年、永年のパートナーで、映像美術を共同で行っていたエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーが永眠)
2010年『サヴァイヴィング ライフ』(長篇第6作)
*ヴェネツィア国際映画祭出品、チェコ・ライオン賞最優秀アートディレクション賞受賞

(受賞歴などは国書刊行会『シュヴァンクマイエルの世界』(編集・翻訳:赤塚若樹)を参考にしました。)