上映作品


Aプログラム

『アリス』(Něco z Alenky/1988/84分/スタンダード/35mm)
©:CONDOR FEATURES.Zurich/Switzerland.1988
監督・脚本・美術:ヤン・シュヴァンクマイエル

原作:ルイス・キャロル
撮影:スヴァトプルク・マリー

共同美術:エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー
アニメーション:ベドジフ・グラセル

編集:マリエ・ゼマノヴァー

音響:イヴォ・シュパリ
エグゼクティブ・プロデューサー:キース・グリフィス、マイケル・ハヴァス
プロデューサー:ペーター=クリスティアン・フューター
プロダクション・マネージャー:ヤロミール・カリスタ
出演:クリスティーナ・コホウトヴァー(アリス)  

 

 ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を原作に3年の歳月をかけ製作した長篇第一作。元々は短篇連作の形で制作されたという。9歳の少女をアリス役に 起用し、実写とコマ撮りを組み合わせ、アリスの人形や白ウサギの剥製、気違い帽子屋の人形、靴下の芋虫など、様々なオブジェがユーモラスにグロテスクに動 き回る。過去の短篇(『自然の歴史』『ドン・ファン』『ジャバウォッキー』『地下室の怪』など)の様々な要素が見られる集大成的な作品。数ある“アリス” ものの中で群を抜いてオリジナリティが高く国内外のファンも多い。
*ベルリン映画祭でプレミア上映、アヌシー映画祭最優秀長篇アニメーション映画賞受賞


Bプログラム

『オテサーネク』

(Otesánek/2000/132分/スタンダード/35mm)©:Athanor
監督・脚本:ヤン・シュヴァンクマイエル 
原案:ヤン・シュヴァンクマイエル

(民話「オテサーネク」のモチーフにもとづく)
美術:ヤン・シュヴァンクマイエル、エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー
撮影:ユライ・ガルヴァーネク 

アニメーション:ベドジフ・グラセル、マルチン・クブラーク
編集:マリエ・ゼマノヴァー 

音響:イヴォ・シュパリ

プロデューサー:ヤロミール・カリスタ
出演:ヤン・ハルトル(ホラーク)

ヴェロニカ・ジルコヴァー(ホラーク夫人)
クリスティーナ・アダムツォヴァー(アルジュビェトカ)、パヴェル・ノヴィー(アルジュビェトカの父)
ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァー(アルジュビェトカの母)、ダグマル・ストシーブルナー(管理人)、イジー・ラーブス(警官)
 

  長篇第4作。チェコの民話『オテサーネク』は子どものいない夫婦が、木の切り株を子どもとして育て、子どもがおかゆ、犬、農夫と次々飲み込んでいくお話。 これを不妊の夫婦の現代の寓話と読み替え、『アリス』や『地下室の怪』同様少女の視点から描く。ホラーク氏が冗談のつもりで妻に与えた木の切り株の人形を 妻はオティークと名付け異常な熱意で可愛がる。現代の寓話はグロテスクで、飼い猫が消え、郵便配達夫も福祉課の職員もオティークの餌食となる。木の切り株 を何体も用意、コマ撮りし、CGを使用したのは授乳シーンのみという。
*ピルゼン映画祭グランプリ、ベルリン国際映画祭アンジェイ・ワイダ賞、チェコ・ライオン賞受賞



Cプログラム

『サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-』

(Přežít svůj život (teorie a praxe )/2010/108分/ヨーロピアン・ヴィスタ/35mm)
©:Athanor
監督・脚本:ヤン・シュヴァンクマイエル 
撮影:ヤン・ルジチュカ、ユライ・ガルヴァーネク
アニメーション:マルチン・クブラーク、エヴァ・ヤコウプコヴァー、ヤロスラフ・ムラーゼック
編集:マリエ・ゼマノヴァー 

音響:イヴォ・シュパリ 

衣装:ヴェロニカ・フルバー
プロデューサー:ヤロミール・カリスタ
出演:ヴァーツラフ・ヘルシュス(エフジェン/ミラン)

クラーラ・イソヴァー(エフジェニエ)、ズザナ・クロネロヴァー(ミラダ)、ダニエラ・バケロヴァー(ホルボヴァー医師)

エミーリア・ドシェコヴァー(老女・超自我)

 

  長篇第6作。シュルレアリストの創作の源泉である「夢」を真っ向から取り上げ、メタモルフォーゼ、夢の具象化、エロスとタナトス、胎内回帰など、様々な映像や美術作品で繰り返し表現してきたモチーフを散りばめたスリリングなラブ・サスペンス。夢の中で出会った美しい女を追いかける中年男が、夢と現実の二重 生活を送る中、幼児期の両親との別れなど過去の経験をもまた再体験することになる。記録と記憶の錯綜を膨大な画像のコラージュと実写の組み合わせで構成し、監督本人や、フロイト、ユングもいがみ合いながら登場する。

*ヴェネツィア国際映画祭出品、チェコ・ライオン賞最優秀アートディレクション賞受賞


Dプログラム

短篇7作・計97分

©:Kratky Film Praha a.s.

特別上映

『魔法のサーカス』(Kouzelný cirkus/1977/9分/スタンダード/Blu-ray)©:1977  Narodni divadlo Praha

原案:エヴァルト・ショルム 
脚本:エヴァルト・ショルム、エミル・スィロテク、イジー・スルネツ、ヨゼフ・スヴォボダ、ヤン・シュヴァンクマイエル、カレル・ヴルチシカ 

演出:エヴァルト・ショルム、イジー・スルネツ、ヤン・シュヴァンクマイエル
舞台美術:ヨゼフ・スヴォボダ 衣装:ズデニェク・サイドゥル 撮影:エミル・スィロテク 編集:アロイス・フィシャーレク


振付:カレル・ヴルチシカ、イジー・フラバル、ヴラスチミル・イーレック、ヨゼフ・コニーチェク、フランチシェク・ポコルニー
音楽:オルドジヒ・フランチシェク・コルテ、ヴラスチミル・ハーラ、ヤロスラフ・クルチェク、イジー・スルネツ 仮面:ズデニェク・サイドゥル 音響:イヴォ・シュパリィ
 

 シュヴァンクマイエルが人形・美術を担当したラテルナ・マギカの舞台作品の一部を特別上映。ラテルナ・マギカとはラテン語で「魔法の幻灯(Magic lantern)」を意味し、多数の映写幕を使って幻想的なスペクタクル効果を出し、 1958年にチェコの舞台美術家ヨゼフ・スヴォボダがブリュッセル万博で初めて試みたもの。『魔法のサーカス』はプラハ国民劇場の代表的なレパートリーの一つで、初演から6200回も世界各地で上演され日本でも上演された。『棺の家』『ドン・ファン』で使われた人形モチーフが登場する。

 

『棺の家』(Rakvičkárna/1966/10分/スタンダード/35mm)
道化達が一匹のモルモットを巡り、パンチとジュディのように木槌で殴り合うスラプスティック・コメディ。
*マンハイム映画祭アニメーション部門及びジョゼフ・フォン・スタンバーグ賞受賞。

『エトセトラ』(Et cetera/1966/7分/スタンダード/35mm)
フロッタージュの技法を使った「翼」や、水彩でメタモルフォーゼを表現した「鞭」、古典絵画を使った「家」と3つのエピソードで構成。
*カルロヴィ・ヴァリ映画祭、オーバーハウゼン映画祭、チェコスロヴァキア映画テレビ同盟、クロムニェジーシュ映画祭受賞。

『ドン・ファン』(Don Šajn1970/33分/スタンダード/35mm)
長篇『ファウスト』にも繋がる放蕩息子ドン・ファンの復讐潭。役者が人形の仮面を被り、伝統的な人形劇のように動くため残酷なシーンも滑稽味を帯びる。
*クロムニェジーシュ映画祭、チェコスロヴァキア文化省賞受賞。

『コストニツェ』(Kostnice/1970/10分/スタンダード/35mm)
フス戦争の死者など数万人の骸骨のオブジェで埋められた実在する納骨堂のドキュメンタリー的作品。検閲の指示で音楽を入れたヴァージョンが存在するが、このオリジナルは官僚的な案内女性のおしゃべりで構成されている。

『レオナルドの日記』(Leonardův deník/1972/12分/スタンダード/35mm)
レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサンや図面が動き出し、崩れ落ちるビルや割られるスイカなどニュース映像を組み合わせた“運動映像”のコラージュ作品。


『アッシャー家の崩壊』(Zánik domu Usherů1980/16分/スタンダード/35mm)
ポーの原作をもとに、朗読と実写、粘土や家具のコマ撮りアニメーションで、「全ての無機物にも知覚はある」との認識のもと、家と精神が壊れていく様を描く。
*クラクフ映画祭、国際シネクラブ同盟賞、ポルト・ファンタジー映画祭受賞。


Eプログラム

短篇6作・計91分

©:Kratky Film Praha a.s.

『シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック』

(Poslední trik pana Schwarzewaldea a pana Edgara/1964/12分/スタンダード/35mm)
舞台演出の経験を生かしたラテルナ・マギカ的な映像・短篇デビュー作。仮面をつけた2人の紳士が不思議な手品を披露し合う。
*ベルガモ映画祭、マンハイム映画祭、トゥール映画祭、ブエノスアイレス映画祭受賞。


『J.S.バッハ-G線上の幻想』

(J.S.Bach:Fantasia g-moll/1965/10分/シネマスコープ/35mm)
ひび割れた壁や窓、錆びた鉄枠などがうつり、音の波形が長い廊下、路面の連なりなどに共振する。バッハの曲とともに動き出す即興的な撮影作品。
*カンヌ映画祭短篇映画賞受賞。

『庭園』(Zahrada/1968/17分/スタンダード/35mm)
久しぶりに再開した郊外の友人の家では不思議な人々が生け垣のように手を繋いで立っていた。驚いたことに人々は自由意志でそこに立っているらしい。
*ヴェネツィア短篇映画祭受賞。

『家での静かな一週間』(Tichý týden v domě/1969/20分/スタンダード/35mm)
人目を避けて1軒の家にやってきた男。ドアから部屋を覗くと日常的な物が動き回る超現実的な世界があった。
*オーバーハウゼン映画祭、タンペレ映画祭受賞。

『オトラントの城』(Otrantský zámek/1973-79/18分/スタンダード/35mm)
イギリスの幻想小説『オトラント城奇譚』の舞台が、東ボヘミアに実在するという仮説を挿絵本の切り絵とテレビ映像で描き、歴史を捏造するいかがわしさが皮肉に描かれる。

『ジャバウォッキー』

(Žvahlav aneb šatičky Slaměného Huberta/1971/14分/スタンダード/35mm)©:Athanor

『鏡の国のアリス』の怪物ジャバウォッキーの詩が朗読され、おもちゃが動き始める。傍若無人かつ人工的なおもちゃの動きを、黒猫が予測出来ない乱暴さで破壊する。
*オーバーハウゼン映画祭、アトランタ映画祭受賞。


Fプログラム

短篇7作・計86分

©:Kratky Film Praha a.s.

『自然の歴史(組曲)』(Historia Naturae (suita)/1967/9分/スタンダード/35mm)
ルドルフⅡ世へのオマージュ。巻貝から、爬虫類、鳥類を経て人類に至る博物誌を標本、図鑑、模型などを組み合わせて描く。
*クロムニェジーシュ映画祭、オーバーハウゼン映画祭マックス・エルンスト賞受賞。

『部屋』(Byt/1968/13分/スタンダード/35mm)
突然、部屋に転がり込む男。割れない卵や後頭部しか映らない鏡など、部屋の悪意に徹底的に翻弄され、男は出口をもとめるが…。
*クロムニェジーシュ映画祭、チェコスロヴァキア映画テレビ同盟、ブリュッセル映画祭、

オーバーハウゼン映画祭、カルロヴィ・ヴァリ映画祭など受賞。

『対話の可能性』(Možnosti  dialogu/1982/12分/スタンダード/35mm)
クレイアニメの金字塔。食べもので出来た頭、食器で出来た頭、文具で出来た頭が三つ巴で互いを飲み込む“永遠の対話”など3部構成。
*ベルリン映画祭短篇映画部門金熊賞及び審査員賞受賞。

アヌシー映画祭、メルボルン映画祭、シドニー映画祭など受賞。

90年アヌシー映画祭「過去に上映された最高の映画」に選出。

『地下室の怪』(Do pivnice/1982/15分/スタンダード/35mm)

©:Slovensky filmovy ustav

地下室にじゃがいもを取りに行く少女と、地下にいる不思議な人や物。じゃがいもはひとりでに箱の中に戻り、黒猫は少女の邪魔をする。
*オーバーハウゼン映画祭受賞。

陥し穴と振り子』(Kyvadlo, jáma a naděje/1983/15分/スタンダード/35mm)
異端審問で死を宣告された男。大きなギロチンの刃が振り子のように降りてくる。そこから逃れても、火を噴く機械が男に迫る。男の視点に限定された画面割でリアルな恐怖を描く。

男のゲーム』(Mužné  hry/1988/15分/スタンダード/35mm)
熱狂的にサッカーをテレビ観戦する男。両チームの選手も審判もよく見ると同じ男の顔。切り絵とクレイを組み合わせ、同じ顔の選手が倒され、得点が加算されるブラックユーモア。

闇・光・闇』(Tma-světlo-tma/1989/7分/スタンダード/35mm)
灯りがともされ、手・目・耳など身体の感覚器・パーツが部屋の中に現れる。粘土で出来た動きがリアルで、ボディが形造られた後の結末も秀逸。
*ベルリン映画祭、クラクフ映画祭、ザグレブ映画祭、エスピノ映画祭、オーデンセ映画祭、ヴヴェール映画祭受賞。

*キャスト・スタッフ、受賞歴は国書刊行会『シュヴァンクマイエルの世界』(編集・翻訳:赤塚若樹)を参考にしました。